「医療事務は長く続けられる仕事ですか?」
これから医療事務を目指す方や、働き始めたばかりの方から、このような質問を受けることがあります。
医療事務は、受付や会計、レセプト業務など専門的な知識が必要な仕事です。
また、患者さんへの対応や医師・看護師との連携など、人と接する機会も多く、決して楽な仕事ではありません。
一方で、長く働き続けている人には、共通する特徴があります。
私は長年、医療事務の現場で働き、多くのスタッフと一緒に仕事をしてきました。
その中で、「この人は長く活躍するだろう」と感じる人もいれば、残念ながら途中で退職してしまう人も数多く見てきました。
この記事では、私自身の経験をもとに、医療事務で長く続く人の特徴や、長く働くために大切だと感じていることをお伝えします。
医療事務は、受付で患者さんをお迎えし、会計やレセプト業務を行う仕事というイメージを持たれることが多いかもしれません。
しかし、長年この仕事に携わってきた私から見ると、それだけでは医療事務という仕事は語れません。
患者さんとの何気ない会話、医師や看護師との連携、制度改正への対応、時には理不尽な苦情を受けることもあります。
だからこそ、この仕事を長く続けられる人には、共通する特徴があると私は感じています。
今回は、長年現場で働いてきた経験をもとに、その特徴についてお伝えします。
医療事務で長く続く人には共通点がある
責任感を持って仕事に向き合える人
私が最も大切だと思うのは、「責任感」です。
医療事務の仕事は、一人で完結する仕事ではありません。
受付で患者さんをご案内する人、診療費を計算する人、会計を担当する人、レセプトを作成する人。
それぞれの仕事がつながっているからこそ、医療機関は円滑に動いています。
そのため、一人が仕事を途中で投げ出してしまうと、周囲のスタッフに大きな負担がかかってしまいます。
私自身、長年働いてきた中で、いつも心のどこかにあったのは、
「自分が辞めたら、周りの人に迷惑がかかる。」
という思いでした。
もちろん、無理をしてまで働くことを勧めたいわけではありません。
体調や家庭の事情など、人生には仕事より優先しなければならないことがあります。
それでも、「自分の仕事には責任を持とう」という気持ちは、医療事務として成長する大きな力になると思っています。
患者さんとのコミュニケーションを大切にできる人
医療事務は、パソコンに向かって事務処理をする仕事というイメージを持たれがちです。
しかし、実際には患者さんと接する時間がとても多い仕事です。
受付は、医療機関の「顔」とも言われます。
患者さんは、不安や痛みを抱えながら来院されることも少なくありません。
だからこそ、笑顔であいさつをすること、相手の話を最後まで聞くこと、分かりやすく説明することが、とても大切になります。
私はこれまで、多くのスタッフを見てきましたが、患者さんとの会話を大切にできる人は、自然と周囲からも信頼されるようになっていました。
特別に話し上手である必要はありません。
相手の気持ちを考えながら接する姿勢が、患者さんにも仲間にも伝わるのです。

素直に学び、ルールを守れる人
医療事務には、多くのルールがあります。
診療報酬の算定方法や保険制度、医療機関ごとの運用など、覚えなければならないことは少なくありません。
新人の頃は、「なぜこのやり方なのだろう」と疑問に思うこともあるでしょう。
もちろん疑問を持つことは大切です。
しかし、まずは決められたルールを正しく理解し、基本を身につけることが成長への近道だと私は感じています。
また、分からないことをそのままにせず、「教えてください」と素直に聞ける人ほど、成長が早い印象があります。
逆に、一人で抱え込み、間違ったまま仕事を進めてしまうと、後から修正が必要になり、自分も周囲も大変になってしまいます。
医療事務は、一人で完璧に仕事をする職種ではありません。
周囲と協力しながら、一つずつ経験を積み重ねていく仕事です。
だからこそ、素直に学ぶ姿勢は、何よりも大きな強みになると私は思っています。
ここまでご紹介した特徴は、決して特別な能力ではありません。
責任感を持つこと。
患者さんの立場に立って考えること。
そして、素直に学び続けること。
私は長年の現場経験を通して、この3つを大切にできる人ほど、医療事務という仕事を長く続け、自分らしいキャリアを築いている姿を数多く見てきました。
医療事務に向いている人・向いていない人については、こちらの記事で詳しく紹介しています。

医療事務を辞める人に多い理由
医療事務は、人の役に立てるやりがいのある仕事です。
一方で、決して楽な仕事ではありません。
私は長年、多くのスタッフと一緒に働いてきました。
その中で、医療事務を長く続ける人もいれば、さまざまな理由で退職していく人も数多く見てきました。
退職には一人ひとり異なる事情があります。
そのため、「この理由だから辞める」という単純なものではありません。
ただ、長年現場を見てきた経験から感じるのは、いくつか共通する理由があるということです。
仕事量と給与のバランスに悩む人が多い
私が最も多く見てきた退職理由は、「仕事量に対して給与が見合わない」と感じることです。
医療事務は、受付に座っているだけの仕事と思われることがあります。
しかし実際には、患者さんへの対応、保険証の確認、会計、診療費の計算、レセプト業務、電話対応など、多くの仕事を同時にこなしています。
さらに、診療報酬改定や制度変更があれば、新しいルールを覚えなければなりません。
月初にはレセプト業務が集中し、残業が続くこともあります。
それだけ責任が重く、覚えることも多い仕事ですが、「もう少し給与が高ければ続けられたのに」という声を聞くことも少なくありませんでした。
これは個人の努力では解決できない部分でもあり、医療事務という仕事全体が抱える課題の一つだと感じています。
女性が多い職場だからこそ、ライフステージの変化も大きい
医療事務は女性が多い職場です。
そのため、結婚や出産、子育て、家族の介護など、ライフステージの変化によって働き方を見直す人が多いことも特徴です。
例えば、子どもの進学をきっかけに「もう少し収入の高い仕事に就きたい」と転職を決意する方もいました。
反対に、子育てが一段落し、「もう一度働きたい」と医療事務の世界へ戻ってくる方もたくさん見てきました。
私は、この仕事は人生のさまざまな場面と深く関わる職業だと思っています。
退職は決して失敗ではありません。
その時々の生活や家族を大切にした結果であり、新しい選択をすることも自然なことです。
人間関係よりも、「思っていた仕事との違い」で辞める人もいる
医療事務というと、デスクワーク中心の仕事を想像される方が少なくありません。
しかし、実際には患者さんと接する時間が非常に多く、医師や看護師、他部署との連携も欠かせません。
忙しい時間帯には、待ち時間への苦情や、時には理不尽な言葉を受けることもあります。
「事務職だから静かな環境で働けると思っていた」
そんなイメージとのギャップに戸惑い、仕事を続けることが難しくなる方もいました。
だからこそ、私は医療事務を目指す方には、仕事の良い面だけでなく、大変な面も知ったうえで選んでほしいと思っています。
辞めることよりも、自分に合った働き方を見つけることが大切
ここまで退職理由についてお話ししましたが、私は「辞めること」が悪いとは思っていません。
無理をして心や体を壊してしまっては、本末転倒です。
一方で、「最初は辞めたいと思ったけれど、数年後には職場になくてはならない存在になった」という方もたくさん見てきました。
医療事務は、経験を積むほどできる仕事が増え、自信もついてくる仕事です。
最初の数か月、あるいは1~2年は苦労することも多いかもしれません。
それでも、もし今悩んでいる方がいるなら、「今のつらさだけで、この仕事が自分に向いていないと決めつけないでほしい」と私は思います。
続けるか、別の道へ進むか。
どちらが正解ということではありません。
大切なのは、自分自身が納得できる働き方を選ぶことです。
その選択をするためにも、医療事務という仕事の現実を知り、自分の価値観と向き合う時間を持ってほしいと思います。
医療事務を長く続けている人でも、「もう辞めたい」と思う時はあるものです。
私自身、長年の現場で何十人もの退職相談を受けてきました。
給料や家庭の事情、人間関係など、辞めたい理由は人それぞれです。
医療事務を辞めたいと感じた時に考えてほしいことや、42年間の現場で見てきた退職理由については、こちらの記事で詳しくお話ししています。

新人を見ていて「伸びる」と感じる人の特徴
長年医療事務の現場で働いていると、「この人はきっと伸びる」と感じる新人さんに出会うことがあります。
もちろん、人にはそれぞれ個性がありますし、仕事を覚えるスピードも違います。
最初から何でも器用にこなせる人ばかりではありません。
むしろ、私が見てきた中では、最初から完璧だった人よりも、一つずつ経験を積み重ねながら成長していった人の方が、長く活躍しているように感じます。
では、どのような人が伸びるのでしょうか。
私が現場で感じてきた共通点をご紹介します。
患者さんとのコミュニケーションを大切にできる人
受付は、医療機関の第一印象を決める大切な場所です。
患者さんが最初に接するのが受付スタッフであり、その対応一つで医療機関全体の印象が変わることもあります。
そのため、医療事務には事務処理だけではなく、接遇の力も求められます。
私が「この人は伸びる」と感じるのは、患者さんと自然にコミュニケーションが取れる人です。
話し上手である必要はありません。
大切なのは、患者さんの目を見て話を聞き、相手の立場に立って対応しようとする姿勢です。
体調が悪く、不安な気持ちで来院される患者さんも多くいらっしゃいます。
そんな時に、優しい一言や丁寧な説明ができる人は、患者さんからも信頼され、職場でも頼りにされる存在になっていきます。
分からないことを素直に聞ける人
新人の頃は、分からないことがあるのが当たり前です。
医療事務は覚えることが多く、制度や診療報酬のルールも複雑です。
だからこそ、分からないことをそのままにせず、「教えてください」と素直に聞ける人は成長が早いと感じています。
一方で、「こんなことを聞いたら恥ずかしい」と一人で悩み、自己判断で進めてしまうと、後から修正が必要になることも少なくありません。
医療事務は一人で仕事をする職種ではありません。
医師や看護師、他の医療事務スタッフと連携しながら進める仕事だからこそ、質問することも大切な仕事の一つだと私は思っています。
ルールを理解し、柔軟に行動できる人
医療事務には多くのルールがあります。
診療報酬請求のルールはもちろん、医療機関ごとの運用方法もあります。
新人の頃は、「どうしてこのやり方なのだろう」と疑問に思うこともあるでしょう。
しかし、まずは基本を理解し、決められた手順を身につけることが大切です。
その上で、患者さん一人ひとりの状況に合わせて柔軟に対応できるようになると、仕事の幅は大きく広がります。
ルールを守ることと、患者さんへの思いやりは決して別のものではありません。
両方を大切にできる人が、医療事務として信頼される人へと成長していくのだと思います。
手際の良さは経験とともに身についていく
医療機関では、待ち時間が患者さんの不満につながることがあります。
そのため、医療事務には正確さだけでなく、スピードも求められます。
ただ、最初から手際良く仕事ができる人はほとんどいません。
私自身、多くの新人さんを見てきましたが、最初は時間がかかっていた人でも、経験を積むことで自然と動けるようになっていく姿を何度も見てきました。
だから私は、新人さんに「最初から完璧でなくても大丈夫」と伝えたいのです。
大切なのは、一つひとつの経験を積み重ねることです。
焦らず、昨日の自分より少し成長する。
その積み重ねが、数年後には大きな自信につながっていきます。
「仕事ができる人」より「信頼される人」が伸びていく
長年現場で働いてきて感じるのは、「仕事が速い人」が必ずしも長く活躍するとは限らないということです。
それよりも、「この人なら安心して任せられる」
そう思ってもらえる人の方が、結果的に長く職場で信頼され、成長していきます。
患者さんに対して誠実であること。
仲間への感謝を忘れないこと。
分からないことを素直に学び続けること。
こうした積み重ねが、医療事務としての技術だけでなく、人としての信頼にもつながっていくのだと私は感じています。
医療事務は、人を支える仕事です。
だからこそ、知識や技術だけではなく、人との関わり方を大切にできる人が、最終的には大きく成長していくのではないでしょうか。
42年間働いて感じた医療事務という仕事の魅力
私は長年、医療事務の仕事に携わってきました。
振り返ってみると、「42年間」という年月は決して短くありません。
もちろん、楽しいことばかりではありませんでした。
制度改正への対応に追われることもありました。
患者さんから厳しい言葉をいただき、落ち込んだこともあります。
仕事量の多さに大変さを感じたことも、一度や二度ではありません。
それでも、ここまで続けてこられたのは、この仕事ならではの魅力があったからだと思っています。
「ありがとう」の一言が仕事への励みになる
医療事務は、患者さんと直接関わる仕事です。
受付での何気ない会話や会計での対応、困っている患者さんをご案内することなど、一つひとつは特別なことではありません。
それでも、
「ありがとう。」
その一言をいただけるだけで、「今日も頑張って良かった」と思える日が何度もありました。
患者さんだけではありません。
一緒に働くスタッフや医師、看護師から感謝の言葉をいただくこともありました。
医療はチームで支える仕事です。
だからこそ、お互いに「ありがとう」と伝え合える職場は、とても温かいものです。
私は、この「ありがとう」の積み重ねが、長く働き続ける力になっていたように思います。
多くの経験が、自分だけの財産になる
医療事務は、一つの業務だけを覚えれば終わる仕事ではありません。
受付、患者さんの登録、診療費の計算、収納業務、診療報酬請求(レセプト)、診療情報管理(カルテ管理)、医師事務作業補助など、経験を重ねるごとに担当する仕事が増えていきます。
私自身、長年の勤務の中で、ほとんどの業務を経験させていただきました。
そのたびに、新しい知識や考え方を学び、多くの引き出しを持つことができました。
もちろん、最初から順調だったわけではありません。
失敗もたくさんしました。
思うようにいかず、自分の力不足を痛感したこともあります。
しかし、その失敗があったからこそ、同じような場面で落ち着いて対応できるようになりました。
経験とは、成功だけで積み重なるものではありません。
失敗を乗り越えた数だけ、人は成長できるのだと私は感じています。
経験を認めてもらえたことが一番うれしかった
42年間働いてきて、一番うれしかったことは何ですかと聞かれたら、私は迷わずこう答えます。
「経験を認めてもらえたことです。」
医療事務は、一朝一夕で身につく仕事ではありません。
制度は変わり、求められる知識も変化していきます。
だからこそ、長年積み重ねてきた経験には、大きな価値があります。
私自身、多くの失敗を経験し、そのたびに先輩や仲間に助けられながら、一歩ずつ成長してきました。
そして今、その積み重ねた経験を必要としていただき、仕事を続けられていることが、何よりもうれしく感じています。
これは資格や肩書きだけでは得られない喜びだと思っています。
医療事務は「人」を支える仕事
医療事務という仕事を一言で表すことはできません。
事務職でありながら、患者さんと接し、医師や看護師と連携し、医療現場を支える仕事です。
病気やけがで不安を抱えて来院される患者さんも少なくありません。
時には理不尽な苦情を受けることもあります。
そんな時でも、私はできるだけ患者さんの立場に立って考えるように心がけてきました。
苦しさや不安を抱えているからこそ、厳しい言葉になってしまうこともあります。
だからといって、すべてを受け止める必要はありません。
しかし、「この方は今、どんな気持ちなのだろう」と考えることは、医療事務としてとても大切な姿勢だと思っています。
医療事務は、書類や数字だけを扱う仕事ではありません。
「人」を支える仕事です。
だからこそ、知識や技術だけでなく、思いやりや誠実さが求められるのではないでしょうか。
私がこれからも伝えていきたいこと
長年医療事務として働いてきた今、私が強く感じていることがあります。
それは、経験は決して無駄にならないということです。
うまくいった日も、失敗した日も、その一つひとつが今の自分を支えてくれています。
だからこそ、これから医療事務を目指す方や、今まさに悩みながら働いている方にも伝えたいのです。
最初から完璧な人はいません。
焦らなくても大丈夫です。
目の前の仕事に誠実に向き合い、一つずつ経験を積み重ねていけば、その経験は必ず自分だけの財産になります。
私自身、そのことを42年間の現場で学んできました。
そして、その経験をこれからは、この「医療事務のリアル」を通して、一人でも多くの方に伝えていけたらと思っています。
まとめ|医療事務は経験が自分の財産になる仕事
医療事務は、決して楽な仕事ではありません。
仕事量の多さや責任の重さに悩むこともあります。
それでも私は、長年この仕事を続けてきて良かったと思っています。
患者さんから「ありがとう」と言われたこと。
一緒に働く仲間に支えられたこと。
失敗を繰り返しながら、一つずつできることが増えていったこと。
そのすべてが、今の私の財産です。
医療事務は、一日で一人前になれる仕事ではありません。
だからこそ、焦らず経験を積み重ねてほしいと思います。
今日できなかったことが、来月にはできるようになっているかもしれません。
一年後には、新人さんを支える立場になっているかもしれません。
医療事務という仕事は、人を支えながら、自分自身も成長できる仕事です。
この仕事に興味を持っている方や、今まさに悩みながら働いている方にとって、この記事が少しでも前向きな一歩につながれば、これほど嬉しいことはありません。

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