「医療事務を辞めたい。」
仕事が忙しい、給料が安い、人間関係に疲れた……。
医療事務として働いていると、一度はそんな気持ちになったことがある方も少なくないと思います。
私は42年間、医療事務の現場で働き、多くのスタッフを見てきました。
その中で、退職していく人もいれば、一度は辞めたいと思いながらも長く活躍する人も数多く見てきました。
この記事では、42年間の現場経験をもとに、医療事務を辞める人に多い理由や、辞めずに続けた人の共通点、そして私が退職を相談された時に伝えてきたことをお話しします。
もし今、「辞めたい」と悩んでいるなら、少しだけ立ち止まって読んでいただければうれしいです。
医療事務は、人の命や生活を支える医療現場の一員として働く仕事です。
その一方で、患者さんへの対応、医師や看護師との連携、制度改正への対応など、想像以上に気を遣う場面も多くあります。
だからこそ、「辞めたい」と思うこと自体は決して特別なことではありません。
私自身、42年間働く中で、多くのスタッフから退職の相談を受けてきました。
その経験から感じるのは、「辞めたい理由」は人それぞれでも、その背景には共通するものがあるということです。
今回は、私が現場で見続けてきた「本当の退職理由」についてお話ししたいと思います。
医療事務を辞める人に一番多い理由
私は42年間、多くの医療事務スタッフを見送り、また新しい仲間を迎えてきました。
その中で感じるのは、退職理由にはある程度の傾向があるということです。
もちろん事情は一人ひとり違いますが、相談を受ける中で特に多かった理由をご紹介します。
一番多い理由は「仕事量に対して給料が見合わない」
私が最も多く聞いてきた退職理由は、「仕事量の割に給料が安い」ということです。
医療事務は受付だけではありません。
会計、レセプト、患者さんへの対応、電話応対、医師や看護師との連携など、毎日たくさんの仕事があります。
制度改正があれば新しい知識も覚えなければなりません。
責任も重く、覚えることも多い仕事です。
それでも給与面で十分に評価されていないと感じ、転職を決意する方は少なくありませんでした。
ただ、興味深いことがあります。
退職した方の多くは、医療事務そのものを辞めるのではなく、同じ医療事務へ転職していました。
より給与の高い職場を選び、新しい環境へ挑戦するのです。
しかし、その職場では夜間診療があったり、土曜日勤務が毎週あったりと、今度は働き方に負担を感じるケースもあります。
そして実際に、「やっぱり前の職場が良かった」と戻って来られる方も何人も見てきました。
私は、この姿を見て、「給与だけで仕事の満足度は決まらない」ということを強く感じています。
女性が多い職場だからこそ、家庭の事情も大きな理由になる
医療事務は女性が多い職場です。
そのため、結婚や出産、ご主人の転勤など、家庭の事情による退職も非常に多くありました。
また、子育て中はパート勤務を選び、子どもの成長に合わせて正社員へ戻る方もいます。
逆に、お子さんの進学を機に収入を増やすため、より条件の良い医療機関へ転職する方もいました。
医療事務は、ライフステージに合わせて働き方を選びやすい仕事でもあります。
私は、それもこの仕事の大きな魅力の一つだと感じています。
医療事務そのものに疲れてしまう人もいる
三つ目は、「医療事務という仕事そのものがつらくなった」という理由です。
患者さんに気を配り、医師や看護師と連携し、同僚とも協力しながら仕事を進める。
毎日、多くの人との関わりがあります。
そのため、人間関係に疲れてしまったり、「いつも気を遣ってばかりでしんどい」と感じたりする方もいました。
医療事務は、人と接することが好きな方にはやりがいのある仕事ですが、反対に、人との関わりが大きな負担になる方にとっては、とても大変な仕事でもあります。
だからこそ、「辞めたい」と思ってしまうこと自体は、決して珍しいことではないのです。
現場で感じたこと
私は42年間、多くの退職相談を受けてきました。
その中で感じるのは、「辞めたい」と思うことと、「医療事務が嫌いになること」は、必ずしも同じではないということです。
一時的に仕事や人間関係に疲れているだけの場合もあります。
だから私は、退職を決める前に「本当に辞めたい理由は何だろう」と、一度立ち止まって考えてほしいと思っています。
退職を相談された時、私がいつも伝えてきたこと
42年間働く中で、私は何十人ものスタッフから退職の相談を受けてきました。
その理由は本当にさまざまです。
「給料が理由で転職したい。」
「結婚するので退職します。」
「子どもとの時間を大切にしたい。」
「もう医療事務を続ける自信がありません。」
一人として同じ理由はありませんでした。
だから私は、最初から引き止めることはしません。
まずは、「どうして辞めたいと思ったのか」をゆっくり聞くようにしていました。
給料が理由なら、無理に引き止めません
退職理由が給料であれば、私は基本的に引き止めませんでした。
生活はとても大切です。
より条件の良い職場を選びたいという気持ちは、決して間違いではありません。
実際に、給与の高い医療機関へ転職された方もたくさんいました。
ただ、その後、「夜診が多くて思った以上に大変だった」「土曜日も毎週勤務になった」と話される方も少なくありませんでした。
そして、中には元の職場へ戻って来られた方もいます。
私は、その姿を何度も見てきました。
だからこそ、「給料」だけではなく、「自分がどんな働き方をしたいのか」も一緒に考えてほしいと思います。
家庭の事情なら、働き方を変える方法もある
結婚や出産、ご家族の介護など、家庭の事情で悩む方も多くいました。
そのような時は、退職だけが選択肢ではありません。
正社員からパートへ。
パートから正社員へ。
ライフスタイルに合わせて働き方を変えることで、仕事を続けられるケースもたくさんありました。
医療事務は、勤務形態を選びやすい職種です。
だから私は、「辞める」ではなく、「働き方を変える」という方法も、一緒に考えるようにしていました。
人生には、その時々で優先したいことがあります。
家庭を大切にしながら働けることも、医療事務という仕事の大きな魅力だと感じています。
「医療事務を辞めたい」と言われた時は部署変更を勧めることも
一番悩むのは、「医療事務そのものを辞めたい」と相談された時です。
そのような時、私はすぐに退職を勧めることはありません。
まずは、「何が一番つらいの?」と聞くようにしていました。
受付で患者さん対応に疲れているのか。
レセプト業務が合わないのか。
人間関係に悩んでいるのか。
理由によっては、部署を変えることで気持ちが大きく変わることがあります。
実際に、受付からレセプトへ異動して力を発揮した方もいれば、反対にレセプトから受付へ変わって生き生きと働くようになった方もいました。
私は、「医療事務が向いていない」のではなく、「今の仕事が合っていないだけ」ということも少なくないと感じています。
現場で感じたこと
私は退職するスタッフに、いつも同じ言葉を伝えてきました。
「カムバック大歓迎です。いつでも連絡してください。」
実際に、一度退職して戻って来られた方は何人もいます。
医療事務は、一度身につけた経験を活かしやすい仕事です。
その時の生活や家庭の事情で離れることがあっても、また新しい気持ちで戻って来られる。
私は、それも医療事務という仕事の良さだと思っています。
だから、「辞める」という選択が、必ずしも終わりではありません。
その人にとって一番良いタイミングで、また笑顔で働ける日が来ることを、私はいつも願っています。
辞めずに続けた人に共通していたこと
私は42年間、多くの医療事務スタッフと一緒に働いてきました。
退職される方もいましたが、一度は「辞めたい」と言いながらも、その後何年も活躍している方もたくさん見てきました。
そのような方々には、いくつか共通する特徴があります。
コミュニケーションが仕事のやりがいにつながる
これまで何度もお伝えしてきましたが、私が一番大切だと感じているのはコミュニケーションです。
患者さんから「ありがとう」と言っていただける。
医師や看護師から「助かったよ」と声を掛けてもらえる。
同僚から「お願いして良かった。」と言ってもらえる。
そんな小さな積み重ねが、「もう少し頑張ってみよう」という気持ちにつながっていきます。
医療事務は、人との関わりの中でやりがいを感じられる仕事です。
信頼関係が築けるようになると、仕事の見え方も少しずつ変わってきます。
医療事務は、多くの人と関わる仕事だからこそ、人間関係が大きな悩みになることがあります。
ただ、私は42年間の現場で、人間関係は仕事を辞めたくなる理由になる一方、長く働き続けられる支えにもなると感じてきました。
同僚とのすれ違いや医師・看護師との関係、人間関係だけで辞める前に考えてほしいことについては、こちらの記事で詳しくお話ししています。

続けることで自信が生まれる
医療事務は、覚えることがとても多い仕事です。
最初は分からないことばかりで、不安になるのも当然です。
しかし、経験を積むほど、「以前ならできなかったこと」が自然とできるようになります。
患者さんへの対応。
医療費の計算。
レセプト業務。
医師や看護師との連携。
一つひとつの経験が積み重なり、それが自信へと変わっていきます。
私は、「経験」は医療事務にとって一番の財産だと思っています。
「辞めたい」は珍しいことではない
長年働いてきて感じるのは、「辞めたい」と思ったことがない人は、ほとんどいないということです。
忙しい日が続いた時。
患者さんから厳しい言葉を受けた時。
思うように仕事ができなかった時。
誰でも気持ちが落ち込むことがあります。
でも、その時に一人で抱え込まず、周りに相談しながら乗り越えてきた人は、少しずつ仕事を楽しめるようになっていきました。
実際に、「もう辞めたい」が口癖だったスタッフが、数年後には後輩を指導する立場になっていたこともあります。
だから私は、「辞めたい」と思う自分を責める必要はないと思っています。
その気持ちと向き合いながら、一歩ずつ前へ進めばいいのです。
医療事務を始めたばかりの頃は、覚えることの多さに戸惑い、「何度教えてもらっても覚えられない」「自分には向いていないのでは」と悩むこともあります。
でも、私は長年多くの新人さんを見てきて、最初から何でもできる人はほとんどいないと感じています。
一度で覚えられなくても、経験を重ねながら少しずつできることを増やしていけば大丈夫です。
医療事務の仕事が覚えられないと悩んでいる方へ、新人さんが最初につまずきやすいことや、仕事を覚えるために大切なことをこちらの記事で詳しくお話ししています。

42年間働いて感じたこと
私は、「辞めたい」と相談を受けたスタッフが、数年後に笑顔で働いている姿を何度も見てきました。
だからこそ、「今つらい」という気持ちだけで、この仕事が自分に向いていないと決めつけてほしくありません。
もちろん、無理をする必要はありません。
でも、少しだけ頑張ってみた先に、患者さんからの「ありがとう」や、仲間からの信頼、そして自分自身の成長を感じられる日が来るかもしれません。
私は、その瞬間をたくさん見てきました。
医療事務を続けるかどうか迷った時は、「自分がこの仕事とどう向き合いたいのか」を考えることも大切です。
私が42年間働いて感じた「長く働くために大切なこと」については、こちらの記事で詳しくお話ししています。

まとめ|辞める前に、一度立ち止まって考えてほしいこと
「医療事務を辞めたい。」
そう思うことは、決して珍しいことではありません。
私は42年間、多くの医療事務スタッフと一緒に働き、その中で何十人もの退職相談を受けてきました。
給料への不満。
家庭の事情。
人間関係。
仕事への不安。
退職理由は一人ひとり違います。
だから私は、「辞めたい」という気持ちを否定することはありません。
むしろ、その気持ちに向き合いながら、「本当に今辞めることが、自分にとって一番良い選択なのか」を一緒に考えることが大切だと思っています。
私自身も、子育て中に両親を亡くし、生活との両立を考えて数年間パート勤務をしていた時期がありました。
その後、ライフスタイルの変化に合わせて働き方を見直し、現在まで医療事務の仕事を続けています。
だからこそ、私は実感しています。
医療事務は、その時々の人生に合わせて働き方を選びやすい仕事だということを。
正社員として頑張る時期があってもいい。
パートとして家庭を優先する時期があってもいい。
そして、また新たな気持ちで挑戦する時期があってもいい。
その柔軟さも、医療事務という仕事の魅力の一つだと思っています。
もちろん、無理をしてまで続ける必要はありません。
新しい道へ進むことが、その人にとって一番良い選択になることもあります。
でも、もし今の悩みが一時的なものなら、もう少しだけ周りに相談してみてください。
働き方を変えることで解決することもあります。
部署を変えることで、自分に合った仕事が見つかることもあります。
私は42年間、多くのスタッフが悩みながら成長し、自信をつけていく姿を見てきました。
だからこそ、今つらい気持ちだけで、この仕事との縁を終わらせてしまうのは少しもったいないと感じることがあります。
医療事務は、経験を積めば積むほど、自分自身の力になっていく仕事です。
患者さんからの「ありがとう」。
仲間からの信頼。
そして、自分自身の成長。
それらは、一日では手に入りません。
だからこそ、長く続けた人だけが味わえる喜びがあります。
もし今、「辞めたい」と悩んでいるなら、焦って結論を出さなくても大丈夫です。
一度立ち止まり、自分が本当に求めている働き方を考えてみてください。
そして、どのような選択をしたとしても、その経験はきっと次の人生につながっていきます。
私はこれからも、この「医療事務のリアル」を通して、42年間の現場で学んだことを、一人でも多くの方へお伝えしていきたいと思います。
「向いていないから辞めたい」と思っている方もいるかもしれません。
でも、私は「向いている人」は最初から決まっているわけではないと思っています。
医療事務に向いている人の特徴については、こちらの記事で詳しく紹介しています。



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