「医療事務の仕事がなかなか覚えられない」「患者さんに質問されても答えられない」と悩んでいませんか。
医療事務は、受付や会計、保険制度、診療報酬など覚えることが多く、最初からすべてできる人はほとんどいません。
私は42年間、医療事務の現場で働き、多くの新人さんを見てきました。
新人さんが最初に苦労するのは、意外にも事務作業そのものより「患者対応」です。
この記事では、新人さんが最初につまずきやすいこと、仕事を覚えるのが早い人の共通点、そして長年の新人教育で大切にしてきたことを、現場経験をもとにお伝えします。
医療事務として働き始めたばかりの頃は、分からないことがあって当然です。
ところが、実際に医療機関の受付に立つと、そう思っている余裕がないほど、次々と患者さんから声を掛けられます。
「トイレはどこですか?」
「売店はどこですか?」
という院内の案内から、
「まだ診察に呼ばれないのですが」
「この診療について教えてください」
「どうして今日の医療費はこの金額なのですか?」
といった、すぐには答えられない質問まであります。
新人さん本人は「まだ入ったばかり」と思っていても、患者さんにはその事情は分かりません。
制服を着て受付に立った瞬間から、一人の医療事務スタッフとして見られます。
これは、新人さんにとって想像以上に大きなプレッシャーです。
でも、最初から何でも答えられる必要はありません。
大切なのは、分からないことを分かったふりをせず、周囲に確認しながら、一つずつ「答えられること」を増やしていくことです。
私は長年、新人さんがその積み重ねによって少しずつ自信をつけ、やがて後輩を教える立場へ成長していく姿を何度も見てきました。
今回は、そんな現場経験から、「医療事務の仕事が覚えられない」と悩んでいる新人さんに知ってほしいことをお話しします。
医療事務の新人が最初につまずくのは患者対応
医療事務の新人さんが最初に苦労することは何か。
長年、多くの新人さんを見てきた私がまず思い浮かべるのは、専門知識やパソコン操作よりも「患者さんへの対応」です。
医療事務として働き始める前は、「まず受付の仕事を覚えて、それから少しずつ患者さんへの対応も覚えていけばいい」と思うかもしれません。
しかし、実際の現場はそうはいきません。
受付に立ったその日から、患者さんは新人さんにも声を掛けてきます。
患者さんには新人もベテランも分からない
新人さんにとって、最初に知っておいてほしいことがあります。
それは、患者さんから見れば、制服を着ているスタッフはみんな同じということです。
新人なのか、10年、20年働いているベテランなのか。
患者さんには分かりません。
制服を着て受付に立っていれば、「この人に聞けば分かるだろう」と思われるのは当然のことです。
そのため、入ったばかりの新人さんにも、さまざまな質問が寄せられます。
「トイレはどこですか?」
「売店は何階ですか?」
といった質問なら、事前に院内を覚えておけば対応できます。
私たちの職場でも、新人さんには実際に業務へ入る前に院内をラウンドしてもらい、トイレや売店など、患者さんからよく聞かれる場所を覚えてもらうようにしてきました。
しかし、すべての質問に事前準備だけで答えられるわけではありません。
診察や医療費について聞かれると新人さんは戸惑う
難しくなるのが、診察内容や医療費について質問された時です。
医療費の仕組みは複雑です。
保険の種類や診療内容によっても金額は変わりますし、診療報酬についての知識がなければ説明できないこともあります。
診察についても同じです。
患者さんから質問されても、その場ですぐに答えてよい内容なのか、医師や看護師へ確認すべき内容なのかを判断しなければなりません。
これは、入職したばかりの新人さんには難しくて当然です。
しかし患者さんからすれば、目の前にいるのは「新人さん」ではなく「医療機関のスタッフ」です。
ここに、新人さんが最初に感じる大きなギャップがあります。
「質問されたのに答えられなかった」
「先輩を呼ばないと何もできなかった」
「こんなに覚えられないなんて、私は医療事務に向いていないのではないか」
そう落ち込んでしまう方もいます。
でも私は、最初から答えられなくて当然だと思っています。
医療事務は、一日や一週間ですべてを覚えられる仕事ではありません。
「分かりません」で終わらせないことが大切
新人さんに最初から正しい答えをすべて求める必要はありません。
ただし、大切なことがあります。
それは、分からない時にどう対応するかです。
分からないのに、自分の判断だけで答えてしまう。
これは避けなければなりません。
医療機関では、ちょっとした説明の間違いが患者さんの不安やトラブルにつながることがあります。
分からない時は、「確認いたしますので、少々お待ちください」とお伝えし、分かる人に確認すればいいのです。
私は、新人さんにとって「何でも答えられること」よりも、分からないことをきちんと確認できることの方が大切だと思っています。
そして、一度教えてもらったことを次に生かしていけばいいのです。
昨日答えられなかった質問に、今日は答えられる。
今日分からなかったことが、来週には分かるようになる。
その積み重ねで、少しずつ仕事の幅は広がっていきます。
患者対応は経験を重ねるほど身についていく
患者対応には、マニュアルだけでは身につかない部分があります。
同じ質問でも、患者さんによって求めている答えが違うことがあります。
不安そうに質問される方もいれば、急いでいる方、体調が悪く余裕のない方もいます。
相手の様子を見ながら、
「どのように説明すれば伝わりやすいだろう」
「今、この患者さんは何に困っているのだろう」
と考えられるようになるには、やはり経験が必要です。
私も長年働いてきましたが、その経験の一つひとつが、今の自分の「引き出し」になっていると感じています。
新人さんがベテランと同じようにできないのは、能力がないからではありません。
まだ経験していないだけなのです。
最初は先輩に確認しながらで構いません。
患者さんから一つ質問されるたびに、一つ新しいことを覚える。
そう考えると、患者対応そのものが、新人さんを成長させてくれる大切な経験になるのではないでしょうか。
医療事務の仕事を覚えるのが早い新人さんの共通点
「なかなか仕事を覚えられない」と悩んでいると、
「私は覚えが悪いのかな」
「ほかの人より仕事ができないのでは?」
と不安になることがあるかもしれません。
しかし、長年多くの新人さんを見てきた私が感じるのは、仕事を覚えるのが早い人は、必ずしも最初から知識が豊富だったり、特別に記憶力が良かったりする人ではないということです。
むしろ、「教えてもらう時の姿勢」に共通点があるように感じています。
一生懸命に話を聞ける人は覚えるのが早い
私が新人教育をしてきた中で、「この人は覚えるのが早いな」と感じるのは、まず人の話を一生懸命に聞ける人です。
教える側が説明している時に、
「なぜ、この作業が必要なのだろう」
「次は何をすればいいのだろう」
と意識しながら聞いている人は、少しずつ仕事の流れを理解していきます。
医療事務には、最初は「そんなことまで覚えなければいけないの?」と思うような細かな決まりもあります。
受付の方法。
患者さんへの案内。
保険証や医療証の確認。
医療費の計算。
診療報酬のルール。
個人情報の取り扱い。
一つひとつを見ると細かなことの連続です。
新人さんの中には、「そこまで覚える必要があるの?」と疑問に感じる方もいるかもしれません。
でも、仕事を続けていくと、その一つひとつに理由があることが少しずつ分かってきます。
だから私は、最初からすべてを理解しようとしなくてもいいと思っています。
まずは、「今は分からなくても、一度きちんと聞いてみよう」という姿勢が大切です。
何となく聞き流すのではなく、一生懸命に聞いたことは、実際の業務と結びついた時に「あの時教えてもらったのは、このことだったんだ」と理解できる瞬間がきます。
その積み重ねが、仕事を覚える力になっていきます。
質問できる人ほど成長していく
もう一つ、仕事を覚えるのが早い人に多いと感じるのが、分からないことを質問できる人です。
新人の頃は、質問することをためらう方がいます。
「さっき教えてもらったばかりなのに、もう一度聞いたら怒られるかな」
「こんなことを聞いたら、仕事ができないと思われるかな」
「忙しそうだから声を掛けにくい」
そんな気持ちになることもあるでしょう。
でも私は、新人さんには分からないことがあれば聞いてほしいと思っています。
医療事務は、患者さんの個人情報や診療、医療費などに関わる仕事です。
分からないことをそのままにして、自分の判断だけで進めてしまう方が問題になることがあります。
「分かりません。もう一度教えてください」
と言えることは、決して恥ずかしいことではありません。
むしろ、正しく仕事を覚えようとしている姿勢だと私は思います。
同じ質問をしても、それだけで「覚えが悪い」とは思わない
一度教えてもらったことを、もう一度聞くのは申し訳ない。
そう感じる新人さんもいると思います。
でも、医療事務の仕事は、一度説明を聞いただけですべて覚えられるほど単純ではありません。
説明を聞いた時には分かったつもりでも、実際に自分でやってみると、
「ここから先はどうするのだろう?」
と分からなくなることがあります。
それは珍しいことではありません。
私は新人さんを育成する時、「育成中は、何度でも聞いてください」と伝えてきました。
もちろん、教えてもらったことを自分でも覚えようとする努力は必要です。
メモを取ったり、あとで振り返ったり、自分なりに整理したりすることも大切でしょう。
それでも分からなければ、もう一度聞けばいいのです。
大切なのは、分からないまま放置しないことです。
「聞く力」は患者対応にもつながっていく
人の話をきちんと聞けることは、仕事を覚えるためだけに必要なのではありません。
やがて、患者さんへの対応にも生きてきます。
患者さんが何に困っているのか。
何を聞きたいのか。
どのような説明を求めているのか。
相手の話を最後まで聞かなければ、本当に必要な対応はできません。
医師や看護師、先輩や同僚とのやり取りでも同じです。
医療事務は、一人で完結する仕事ではありません。
だから私は、「聞く力」は医療事務で長く働くための大切な力の一つだと思っています。
新人の頃に、先輩の説明を一生懸命聞く。
分からないことを質問する。
教えてもらったことを一つずつ自分のものにしていく。
その小さな積み重ねが、いつの間にか大きな成長につながります。
「なかなか覚えられない」と焦る必要はありません。
昨日分からなかったことが、今日は一つ分かった。
それだけでも、確実に前へ進んでいるのです。
医療事務の仕事がなかなか覚えられない時に見直したいこと
医療事務として働き始めて、
「何度教えてもらっても覚えられない」
「周りの新人さんより、自分だけ遅れている気がする」
と悩むことがあるかもしれません。
でも、仕事を覚えるスピードには個人差があります。
私は長年、多くの新人さんを見てきましたが、最初はなかなか仕事を覚えられなかった人が、数か月、半年と経験を積むうちに大きく成長する姿も見てきました。
ですから、「覚えるのが遅い=医療事務に向いていない」とすぐに決める必要はないと思っています。
ただ、なかなか仕事が頭に入らないと感じる時には、一度、自分の「覚え方」を振り返ってみることも大切です。
「仕事をなかなか覚えられないから、自分は医療事務に向いていないのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。
しかし、私は長年多くの新人さんを見てきて、「向いている人」は最初から何でもできる人ではないと感じています。
医療事務に向いている人の特徴については、こちらの記事で詳しくお話ししています。

自分が話すより、まず相手の説明を最後まで聞く
新人教育をしてきた中で感じるのは、仕事を覚えるためには、やはり人の話をきちんと聞くことが基本だということです。
中には、説明の途中で自分の話を始めてしまったり、「分かりました」と最後まで聞かずに動き始めたりする方もいます。
本人に悪気があるわけではありません。
「早く覚えたい」
「自分も分かっていることを伝えたい」
という気持ちから、つい話したくなることもあるでしょう。
でも、医療事務には細かなルールがたくさんあります。
例えば、
「基本的にはこの方法で対応します。ただし、この場合だけは違います」
というように、最後まで聞かなければ分からない例外も少なくありません。
説明の途中まで聞いて「分かった」と思ってしまうと、その大切な部分を聞き逃してしまいます。
だから私は、まず相手の説明を最後まで聞くことが大切だと思っています。
聞き終わってから、「ここは、こういう意味で合っていますか?」と確認すれば、理解も深まります。
落ち着いて「今覚えること」に集中する
新人さんの中には、覚えなければならないことが多すぎて、焦ってしまう方もいます。
受付に立てば患者さんが次々に来られる。
電話が鳴る。
先輩から新しい仕事を教えてもらう。
周りでは医師や看護師、ほかのスタッフが忙しく動いている。
医療機関は、決して静かな環境ではありません。
「あれも覚えなければ」
「これもできるようにならなければ」
と考えているうちに、目の前の説明に集中できなくなることもあります。
でも、最初からすべてを一度に覚える必要はありません。
今教えてもらっていることを、まず一つ覚える。
それでいいのです。
一つできるようになったら、次へ進む。
その繰り返しで、少しずつ仕事はつながっていきます。
分かったふりをしないことも大切
新人さんの中には、
「何度も聞くのは恥ずかしい」
「仕事ができないと思われたくない」
という気持ちから、分からなくても「はい、分かりました」と答えてしまう方がいます。
でも、私はこれが一番心配です。
医療事務は、患者さんの個人情報や保険情報、医療費など、大切な情報を扱います。
一つの確認不足が、患者さんへの間違った説明や会計の誤りにつながることもあります。
だからこそ、
「分かりません」
「もう一度教えてください」
と言えることは、とても大切です。
分からないことそのものが問題なのではありません。
分からないまま仕事を進めてしまうことの方が問題なのです。
「覚えられない」ではなく「どこが分からないか」を考える
「仕事が覚えられません」
と一言で言っても、実際には人によってつまずいているところが違います。
患者さんへの声掛けが難しいのか。
保険証の確認が分からないのか。
パソコン操作で迷うのか。
医療費の仕組みが理解できないのか。
電話対応が苦手なのか。
まずは、自分が何につまずいているのかを具体的にすることが大切です。
「全部分かりません」では、教える側もどこから説明すればよいのか分かりません。
一方で、
「この場合の保険証の確認方法が分かりません」
「患者さんからこのように聞かれた時、どう答えればいいですか?」
と具体的に質問できれば、教える側も答えやすくなります。
質問すること自体も、経験とともに上手になっていきます。
周りと比べすぎなくていい
同期で入った人が、自分より早く仕事を覚えている。
そんな姿を見ると、焦ることもあるでしょう。
でも、人にはそれぞれ得意なことがあります。
患者対応をすぐに覚える人。
パソコン操作が得意な人。
数字に強く、会計業務を早く理解できる人。
時間はかかっても、一度覚えたことを丁寧に続けられる人。
最初の数週間だけを見て、「誰が一番仕事ができるか」を決めることはできません。
私は長年新人さんを見てきましたが、最初の覚え方がゆっくりでも、その後しっかり成長して長く活躍する方はたくさんいました。
大切なのは、昨日の自分と比べることです。
昨日は一人でできなかったことが、今日は少しできた。
先週は答えられなかった患者さんの質問に、今週は答えられた。
それも立派な成長です。
「私は覚えるのが遅い」と焦るより、「今日は何が一つできるようになっただろう」と考えてみてください。
小さな積み重ねが、やがて大きな自信につながっていきます。
新人教育で私が必ず伝えてきたこと
私は長年、医療事務の現場で多くの新人さんを見てきました。
新人教育に関わる中で、最初に必ず伝えるようにしている言葉があります。
それは、
「育成中は、何度でも聞いてください。一度の説明で覚えられなくても大丈夫です。分からないままにしておくよりも、聞いてください。」
という言葉です。
医療事務として働き始めたばかりの頃は、本当に覚えることがたくさんあります。
患者さんへの対応、保険証や医療証の確認、患者登録、電話対応、会計、診療報酬の知識……。
勤務する医療機関によっては、さらに多くのルールや業務を覚えなければなりません。
それを一度説明されただけで、すべて理解して覚えられる人はほとんどいないと思います。
だから私は、新人さんに最初から完璧を求める必要はないと考えています。
一度で覚えられなくても大丈夫
新人さんの中には、とても真面目だからこそ悩んでしまう方がいます。
「昨日教えてもらったのに、また分からなくなってしまった」
「同じことを聞いたら怒られるのではないか」
「こんなに覚えられない私は、この仕事に向いていないのかもしれない」
そんなふうに、自分を責めてしまうことがあります。
でも、説明を聞くことと、実際に一人でできるようになることは別です。
教えてもらった時には、「分かりました」と思っていても、翌日、自分一人でやろうとすると手が止まることがあります。
これは決して珍しいことではありません。
実際にやってみて初めて、「ここが分からなかったんだ」と気づくこともあります。
だから私は、一度聞いて覚えられなかったからといって、必要以上に落ち込むことはないと思っています。
二度、三度と確認しながら、少しずつ自分のものにしていけばいいのです。
分からないまま仕事をする方が怖い
私が新人さんに「何度でも聞いてください」と伝えるのには、理由があります。
医療事務は、分からないことを分からないままにしておくことの方が怖い仕事だからです。
例えば、患者さんの保険情報を間違えて登録すれば、医療費の計算や診療報酬の請求に影響する可能性があります。
患者さんへの説明を間違えれば、不安を与えたり、場合によってはトラブルにつながったりすることもあります。
だからこそ、
「これで合っていますか?」
「もう一度確認してもいいですか?」
と聞くことは、とても大切です。
私は、質問する新人さんを見て、「こんなことも分からないの?」と思うより、
「間違える前に確認してくれて良かった」と思うことの方が多くあります。
質問することは、恥ずかしいことではありません。
患者さんに正しい対応をするために必要な行動なのです。
「何度でも聞いていい」と最初に伝える理由
新人さんに、「分からなければ聞いてください」と言うだけでは、実際にはなかなか質問できないことがあります。
忙しそうな先輩を見れば、「今、声を掛けたら迷惑かな」と思うでしょう。
一度教えてもらったことなら、「また同じことを聞いたら怒られるかもしれない」と心配することもあります。
だから私は、育成を始める時点で、「何度でも聞いてください」と、はっきり伝えるようにしています。
最初にそう言われているだけでも、新人さんは少し質問しやすくなると思うからです。
もちろん、自分で覚えようとする努力は必要です。
教えてもらったことをメモする。
あとで振り返る。
分からなかったところを整理して質問する。
そうした姿勢は大切です。
でも、それでも分からないことはあります。
そんな時は、遠慮せず聞けばいいのです。
「聞いてはいけない」と思って間違えるより、「もう一度教えてください」と言える方がずっといい。
私はそう考えています。
新人さんが覚えられない時、教える側にもできることがある
新人教育を長く経験してきて感じるのは、新人さんが仕事を覚えられない時、必ずしも本人だけに原因があるわけではないということです。
教える側の伝え方も、とても大切です。
私は新人さんに説明する時、できるだけ、ゆっくり、はっきり、聞き取りやすく話すことを心掛けています。
教える側にとっては、何年も繰り返している当たり前の仕事です。
そのため、つい説明が早くなったり、「これくらいは分かるだろう」と思って説明を省いてしまったりすることがあります。
でも、新人さんにとっては初めて聞くことです。
教える側が10年かけて身につけた知識を、新人さんが一度の説明ですべて理解できるはずはありません。
私は、教える側が自分の「当たり前」を基準にしすぎないことも大切だと思っています。
新人教育は「教える」だけではなく「聞ける環境」をつくること
新人教育というと、「どのように仕事を教えるか」に目が向きがちです。
もちろん、それも大切です。
でも私は、それと同じくらい、「分からないと言える環境をつくること」が大切だと思っています。
新人さんが、
「こんなことを聞いたら怒られる」
「忙しそうだから聞けない」
「分からないと言ったら評価が下がる」
と思ってしまえば、分からないまま仕事を進めるようになるかもしれません。
それは新人さんにとっても、患者さんにとっても、医療機関にとっても良いことではありません。
「分からなかったら聞いていいよ」
「一度で覚えなくても大丈夫だよ」
そう言える職場であれば、新人さんも安心して成長していけるのではないでしょうか。
私は、新人を育てるということは、単に仕事のやり方を教えることではないと思っています。
質問しながら、一つずつ仕事を覚えていける環境をつくることも、新人教育の大切な役割です。
現場で感じたこと
私は新人さんに、いつもこう伝えてきました。
「一度の説明で覚えられなくても大丈夫です。育成中は何度でも聞いてください。」
医療事務は、覚えることが本当に多い仕事です。
最初からすべてできる人はいません。
分からないことをそのままにするより、「もう一度教えてください」と聞けることの方が、私はずっと大切だと思っています。
そして、新人さんを育てるのは、本人の努力だけではありません。
何度でも質問できる雰囲気をつくり、昨日より今日、今日より明日と少しずつ成長できるように支えることも、教える側の大切な役割だと私は思っています。
まとめ|医療事務は昨日より一つできることが増えれば大丈夫
「医療事務の仕事が覚えられない」
「何度も同じことを聞いてしまう」
「患者さんに質問されても答えられない」
働き始めたばかりの頃は、そんな自分に自信をなくしてしまうことがあるかもしれません。
周りの先輩たちが何でも知っていて、患者さんからの質問にもすぐ答えている姿を見ると、「どうして私はできないのだろう」と焦ってしまうこともあるでしょう。
でも、今は当たり前のように仕事をしている先輩たちにも、何も分からなかった新人時代がありました。
私自身もそうです。
医療事務は、一日や一週間ですべてを覚えられるような仕事ではありません。
患者さんへの対応。
保険証や医療証の確認。
患者登録。
医療費の計算。
診療報酬請求。
電話対応。
医師や看護師との連携。
勤務する医療機関によって、さらに覚えなければならないことがあります。
だから、最初からすべてできなくて当然なのです。
「初日より成長していること」に気づいてほしい
新人さんが、
「私には向いていないかもしれません」
「もう辞めたいです」
と落ち込んでいる時、私はその人の様子を見ながら、頑張ってほしいと思う方にはこんな言葉を掛けてきました。
「私は、全然大丈夫だと思いますよ。」
そして、
「初日より2日目、1週間、1か月……着実に成長しているじゃないですか。」
と伝えることもあります。
本人は毎日必死なので、自分がどれだけ成長したのか、なかなか気づけないものです。
でも、周りから見ていると分かります。
初日はトイレの場所を聞かれて戸惑っていた人が、数日後には自然に案内できるようになっている。
最初は患者さんに声を掛けられるたびに先輩を呼んでいた人が、少しずつ自分で答えられるようになっている。
分からないことばかりだった人が、いつの間にか新しく入ってきた人に教えている。
成長とは、ある日突然何でもできるようになることではありません。
昨日できなかったことが、今日は一つできるようになる。
その積み重ねなのだと思います。
周りと比べるより、昨日の自分と比べてみる
新人さんによって、仕事を覚えるスピードは違います。
患者対応が得意な人もいれば、パソコン操作をすぐに覚える人もいます。
数字に強い人もいれば、時間はかかっても一つひとつ確実に覚えていく人もいます。
だから、周りの人と比べて、
「私は遅い」
「私だけできない」
と決めつける必要はありません。
比べるなら、昨日の自分と比べてみてください。
昨日より一つ、患者さんの質問に答えられた。
昨日より一つ、保険証の確認が分かるようになった。
昨日より少し、電話に出ることが怖くなくなった。
それで十分です。
その一つひとつが、やがて自分の経験になります。
分からないことを聞ける人は、少しずつ成長できる
私は、新人さんに「何度でも聞いてください」と伝えてきました。
それは、質問することを悪いことだと思ってほしくないからです。
もちろん、教えてもらったことを覚えようとする努力は必要です。
メモを取る。
振り返る。
自分で一度考えてみる。
それでも分からなければ、聞けばいいのです。
医療事務では、分からないまま自己判断するより、きちんと確認することの方が大切です。
そして、一度聞いたことが次にできるようになれば、それも立派な成長です。
何度か繰り返すうちに、いつの間にか人に聞かなくてもできるようになります。
その経験が一つ、また一つと増えていくことで、自分の中にたくさんの「引き出し」ができていきます。
「向いていない」と決めるのは、少し早いかもしれない
仕事を覚えられない時期が続くと、
「私は医療事務に向いていないのでは?」
と思うかもしれません。
でも私は、新人の頃に仕事を覚えるのが遅かったという理由だけで、「向いていない」と決めるのは少し早いと思っています。
長年、多くの新人さんを見てきました。
最初は患者さんへの対応が苦手だった人。
何度も同じことを確認していた人。
自信がなく、「私には無理かもしれません」と話していた人。
そんな方が経験を積み、数年後には頼りにされる存在になっていることもあります。
医療事務は、経験することで身につくことがとても多い仕事です。
今できないことが、ずっとできないとは限りません。
仕事を覚えられないことが続くと、「もう辞めたい」と思ってしまうこともあるでしょう。
私は42年間の現場で何十人もの退職相談を受けてきましたが、辞める以外にも、働き方や環境を変えることで解決できる場合があります。
医療事務を辞めたいと感じた時に考えてほしいことについては、こちらの記事で詳しくお話ししています。

せっかく出会えた仲間だから、長く一緒に働きたい
私は、頑張っている新人さんが「辞めたい」と悩んでいる時、
「せっかく入社していただいたので、長く一緒に働きたいと思っています。」
と伝えることがあります。
もちろん、無理をしてまで続ける必要はありません。
本当に仕事が合わないこともありますし、別の道を選ぶことがその人にとって良い場合もあります。
でも、少しずつでも成長しているのに、「まだできないから」という理由だけで諦めてしまうのは、私は少しもったいないと思います。
最初から何でもできる人はいません。
分からない。
聞く。
やってみる。
間違えたら、もう一度教えてもらう。
そして、次はできるようになる。
医療事務は、その繰り返しで身につけていく仕事です。
もし今、「医療事務の仕事が覚えられない」と悩んでいるなら、入職した初日の自分を思い出してみてください。
その頃と比べて、できるようになったことが一つでもありませんか。
きっと何かあるはずです。
初日より2日目。1週間後。そして1か月後。
少しずつでいいのです。
昨日より今日、できることが一つ増えたなら、それは確かな成長です。
焦らず、一つずつ自分の経験にしていってほしいと思います。
医療事務は、最初からすべてできる人だけが長く続けられる仕事ではありません。
経験を重ねながら、自分なりの働き方を見つけていくことも大切です。
私が長年の現場経験から感じた「医療事務で長く働くために大切なこと」については、こちらの記事でも詳しくお伝えしています。



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